猫伝染性腹膜炎とは(FIP:Feline infectious peritonitis)

猫コロナウイルスの強毒型による致死性の感染症です。症状として発熱、食欲不振、元気消失などから発現し、黄疸や腹水貯留、貧血など様々な症状が認められます。胸水や腹水が貯留するウェットタイプと肉芽腫性病変や眼病変、神経症状などを呈するドライタイプ、また両方の混合タイプに分類され、さらに免疫低下を起こし病状が進行する病気です。

今までのFIPは発症してしまうと治療が難しい不治の病でしたが、近年治療が出来るようになってきました。Mutianという製品が使用されるようになり、寛解という形ですが治療できる病気になりました。

日本では扱いがないものの、現在は様々な製品が出ているようですが、動物用医薬品として認可されているものは1種類と限られています。当院でもCFNという製品を使用し寛解しているねこちゃんがいますが、使用している製品は認可されているわけではなく、あくまでも飼い主様の同意のもと使用する物になります。使用実績はある物ですが、どのくらい有効成分が含有されているのか、今後発症しうる副作用はどのようなものでどのように発現するのかなど明確なデータはありません。

そこで色々調べているうちに、海外で動物用医薬品として認可されている薬に行きつき、輸入することができました。今後はそれをメインで使用していこうと考えています。

治療法は飼い主様と相談の上で決める形をとりますが、基本的には動物用として海外で認可されているレムデシビル、GS-441524を使用する事をお勧めします。

ISFM(国際猫医学会)でも治療プロトコルが発表されている唯一認可されている動物用医薬品になります。

治療の流れ

治療開始前には精密検査が必要になります。現在の体の状態はどうなのか、どのタイプのFIPなのかを調べないと薬の投与量が決められません。

基本的な血液検査、コロナウイルスの抗体価検査、タンパク分画、炎症反応値(SAA、AGP)、腹部超音波検査、レントゲン検査が必要になります。

また、治療開始後も状態により1週間~2週間に1回の血液検査などが必要となります。

全ては飼い主様とご相談させていただいたうえで方針を決めさせていただきます。

また、輸入量が限られているためすぐに治療できるかはお問い合わせの上ご相談下さい。

この記事を書いた人

金澤 崇史

2006年大学卒業後、2006~2012年の間関東圏3ヶ所の病院に勤務。2012年からは眼科専門病院に勤務し眼の専門的な医療に携わる。2015~2018年にかけて神奈川県の病院の分院長を務め、2018年からは東京都にしやま動物病院に勤務。2022年4月、東京都武蔵野市に吉祥寺あおぞら動物病院を開院する。比較眼科学会、日本獣医がん研究会、ねこ医学会、国際猫医学会に所属し、特に眼科診療を専門とする。